第5章 麻布十番の惨劇(前)

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「先般彼女の母親にも会いました。岡崎テレジアは占い師でした。それも主に東欧で活躍したかなりの人物らしいです。ネットで調べても少しでしたが名前が出てくる事件があります。絵里花にはルーマニア人の血も入っているそうです。」 「ルーマニア・・・。」 早瀬が考え込む。 「ドラキュラ伯爵の故郷ですね。それは偶然かも知れませんが、大事なのはこの親子が我々に嘘をついていることです。」 「嘘?」 「実際彼女らは偶然店にいたように言ってますが、何かの目的があって店にいたと思われます。それが何なのか分かりませんが。」 「ただ、この喫茶店に神島隆一がいたのは確実です・・・。」  生澤も今は真剣な表情だった。岡崎親子の嘘は合点がいかない。神島がこの店にいたことも間違いないと思っていた。 「なるほどな・・・。」 阿木の話を聞いて早瀬は興味を引かれたようだった。 「これら一見何の関係もなさそうな事件、だがその事件のどこかに必ず係わってくる人物がいる。」  早瀬は機捜の二人を厳しい視線で睨みつけた。 「神島隆一。」 その名を3人が同時に上げた。 「神島から事情聴取はしたんですよね?」 と阿木。 「通り一遍はな。」 と早瀬管理官。 「この男、どうも分からないことが多過ぎる。一方でTVなどにも出演し、最近はマスコミ巻き込んで政経研学生連合か、次の都議選に出るなどと噂もある。」  早瀬は腕組みをした。本当に困った時、早瀬は腕を組む癖がある。     
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