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「ああ。なんでも川崎大学の大学院生だと言ってた。だけど、彼は政治評論家の醍醐晋太郎のピンチヒッターとして呼ばれたはずだ。実際は醍醐が間に合ったので番組には出演していないんだがね。」
柳澤が説明する。
「調べて報告してくれ。」
水上が悠里に念を押した。
「神島さんに報告する。」
きっと目を見開いて水上に対峙する悠里。
「神島さんは忙しい。柳澤に報告をくれ。」
「神島さんはどうしてるの? 最近全然連絡がないけど。」
「お前が知る必要はない。」
「どういうこと? 私はあなたの僕じゃないわ。」
悠里の言葉には明らかに棘があった。政経研学生連合の代表を神島に変わって水上が取り仕切っているのが面白くない。それが言葉の強さに表れる。
「わ、わかってる。計画は次の段階へ進んでるんだ。それで忙しいんだよ。」
「ふん。」
悠里は返事をする代わりに不承不承頷いた。
どうしても強い女に弱みを見せてしまうのが水上翔太だ。
「阿久津亮治ってどういう人?」
悠里がここぞとばかりに唐突に名前を挙げる。
「どういうって?」
更に狼狽の色を見せる水上。
「私、知らないわ。最近ずいぶん態度がでかいって聞いてる。どこの人なの? 大学生なの?」
「余計なことは知らなくていい。」
「そんな・・・。」
「阿久津さんは神島さんの右腕だよ。」
不承不承答える水上翔太。
「水上さんは今や左腕さ。」
柳澤がくだらない軽口を飛ばした。
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