第5章 麻布十番の惨劇(前)

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生澤も二宮に同情する。 「失礼します。警視庁の早瀬と申します。」 「渋谷北署の二宮です。」 そして機捜の二人が名乗った。対応に出てきたのは安野前内閣官房副長官婦人だった。安野家に子供は一人だけだ。婦人に招き入れられ4人は邸内に足を踏み入れた。 「まだ、犯人は捕まらないんでしょうか。」  婦人は見るからに憔悴した顔をしている。 「申し訳ありません。鋭意捜査中です。」 早瀬が応じる。 「それで、今日はいったい・・・。」 「もう一度娘さんの部屋を見せていただけないでしょうか。」 4人は二階の美枝子の部屋に入る。 「用があれば呼んでください。」 そう言うと婦人は出て行った。  美枝子の部屋は高校生の時で時間が止まったような部屋だった。というより大学生になってからはこの部屋であまり生活していなかったのだろう。部屋には未だに高校の制服が掛けてあった。これは美枝子と言うより母親の気持ちなのだろう。 「まさか、あんな死に方をするとはな・・・。お母さんも辛いだろう。」 二宮が感傷的な言葉を口にする。 「何か手掛かりになるものはないのか、探せ。」  しかし早瀬はあくまで実務的だ。家宅捜索の手順通り一方方向に、しかも上から下へのセオリー通りに部屋を捜索していく。     
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