第5章 麻布十番の惨劇(前)

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「手紙というのは・・・。今時ですから、もっぱらメールとかSNSとかでしたし。私ともLINEで・・・、でもパソコンのメールも警察の方が持っていらして、全部調べられたと思いますが・・・。」  早瀬は机の上のPCの電源を入れた。極小さな起動音が鳴りHDを読み出す音がした。 「そう言えば、美枝子は高校生の頃短期留学したことが有りまして、その時の友人とは頻繁にメールのやり取りをしていたようです。」 「それはどちらの国に?」 「ええ、スイスです。スイスのチューリッヒへ3ヶ月留学しました。向こうでいいお友達が出来たと言っていました。」 メールを開く早瀬。タイトルをさっと流してもフランス語、あるいはドイツ語のものは見当たらなかった。もちろん英語もない。 「美枝子さん、外国語は?」 「留学と言っても短期ですし、たぶん出来なかったと・・・。」  早瀬は何でもズケズケと聞く。生澤はひやひやしながらこのやり取りを聞いていた。 「なら、そのお友達とのやり取りは?」 「彼女とは英語とかフランス語を身振り手振りで、そう自分が教えた日本語も混ぜながら話していたようです。そんなことを話していました。」 早瀬は机の引き出しを開けると中を探り出す。が、仮にも家宅捜索をしてあるところだ、目新しいものが出るはずもなかった。 「美枝子さんのスマートフォンはありますか?」  早瀬が何かひらめいたように母親に聞いた。 「あ、はい。」     
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