第5章 麻布十番の惨劇(前)

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安野婦人は階下へ降りていく。 「スマホに何もありませんでした。」 二宮が言う。 「スマホの通話履歴から神島隆一の名前を見つけただけです。海外との通話履歴もありませんでした。」 やがて美枝子のスマホを携えて安野婦人が戻ってきた。 「失礼します。」  スマホを手に取ると早瀬は画面を素早くスワイプさせていく。 「あった・・・。やっぱりな。」 「なんですか?」 と二宮。生澤、阿木もスマホの画面を覗き込む。安野婦人も身を乗り出していた。 「これだよ。スカイプだ。」 「ああ。無料電話アプリですね。海外との通話には便利だ。」 更にスマホを探索する早瀬はやがて大発見をする。 「これか・・・。」 「何です? ユーチューブですか?」 「ユーチューブの動画をダウンロードできるアプリだ。ここにダウンロードしたファイルが並んでいる。」  そこには様々な楽曲が落とされていた。主にユーロビートのダンス曲が多い。 「今時ユーロビートって。」 一番若い生澤がそう言うと二宮が、 「いや、一頃クラブなんかで流行ってたことがある。」 と答えた。膨大なファイルが並んでいた。一覧を何度もスクロールさせながら早瀬が選んだのは、スカイプのテレビ電話の録画だった。     
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