第5章 麻布十番の惨劇(前)

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「はい。あくまで捜査協力と言うことで、安野官房副長官の、ああ、前の、ですね、奥方にお話を伺いました。」 早瀬はいつもとは違うやや突っ張った言葉で大垣に応じた。 「何か出たか?」 早瀬は大垣捜査一課長の顔を見つめる。 「はい。出ました。これから合同捜査会議を始めますが、その前に報告しておくことがあります。」 「うむ。話せ。」  早瀬は解析の終了した安野美枝子のスマートフォンの情報と機捜201が集めてきた情報を時間系列で説明した。その中には岡崎テレジアから提供された六本木喫茶店爆破事件の捜査を根底から覆す情報も含まれていた。 「何? じゃあ今国際テロの可能性も有りと公安中心に進めているあの事件が半グレ組織の仕業だったというのか?」 「そう思われます。しかもあの店にいた誰かを狙った犯行だった。」 「お前はそう思うんだな。」 大垣の視線が早瀬の瞳に突き刺さる。 「もちろん物証はありませんし、根拠が占い超能力の類いですが。状況証拠はこの線の正当性を示しています。」 早瀬が胸を張って答えた。 「分かった。公安は気にするな。お前はお前の仕事をしろ。」 「は。」  特別会議室に集まった捜査員たちを前に早瀬が話し出した。ヴァンパイアや神秘的なことはもちろん話さない。分かった事実を淡々と語った。そして各事件の関連性を指摘していった。     
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