第5章 麻布十番の惨劇(前)

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「木島洋子殺害の件、東光大学講師梶原桃子を重要参考人とする。梶原桃子を徹底的に洗え。」 早瀬が関係捜査員に檄を飛ばす。 「次ぎ、安野美枝子殺害事件については、まだ絞れない。だが、安野美枝子が梶原桃子、木島洋子を調べていたことは間違いない。だが、殺害時の手口から言って梶原桃子の仕業とは思えない。その上にいる人物、すなわち神島隆一と仲間たちだ。神島の関係者を洗うんだ。」  会議はちょうど1時間で終了した。これは早瀬の信念である。長い会議は何も産まない、そういうことだった。捜査員たちが部屋を出て行くのを見送りながら、部屋の遙か後方に座っていた機捜201の二人に早瀬が手招きをした。  そしてもう一人ショートカットの白い髪の女性捜査官が早瀬に近づいて来た。 「紹介しよう。警察庁警備局公安課特殊案件対策室、(あららぎ)青泉警部補だ。」 「あららぎです。」 その捜査官は銀髪ではあったがまだ20代後半と思われる若い女だった。銀髪は明らかに脱色などではなく元々の白髪に見えた。眉毛や睫、うぶ毛さえも白い。肌も透き通るように白く、瞳の色も黒ではなくパープルに近かった。 「機動捜査隊の阿木です。」 「生澤です。」 機捜201の二人が驚いた顔で挨拶した。 「この方はいったい・・・。それに公安の・・・。」     
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