第5章 麻布十番の惨劇(前)

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「お前たちは蘭と協力して神島隆一と岡崎親子を調べろ。そしてさっきも説明したがまだ内容が非常に不明瞭な安野美枝子とベルという女性の会話を蘭は解析してくれ。」 「了解しました。」  蘭青泉は敬礼をしながらニコっと微笑んだ。蘭が美人であることに機捜のふたりは初めて気が付いた。  特別合同捜査会議を終えて飛び出していった捜査員たちの中で一人部屋の外に待機していた人物がいた。 「はい。私です。捜査会議が今終了しました。はい。喫茶店爆破事件の犯人はモスク・グループではなく京浜連合だという方針です。北出という京浜連合の男が喫茶店内で目撃されていたと。はい、そうです。各事件の背後に神島さんがいると警察は睨んでいます。いえ、直接は・・・。」  男はポケットからハンカチを取り出すと無造作に汗を拭いた。携帯を耳に押し当て、今聞いた会議の内容を話している。 「それと、岡崎テレジアとかいう女のことが話題に上りました。いえ、あの、それは私にも・・・。」 男はまた汗を拭く。冷房の効いた会議室から出て汗が噴き出したと言うより説明に窮して冷や汗が流れていると言った方が正しそうだった。 「この件は機動捜査隊の連中が調べているようです。はい、はい、そうです。」  男は電話を切るとハンカチを広げて顔全体をぬぐった。その時会議室から早瀬たちが出てきた。 「おい、田所刑事。さっさと捜査に行かんか。」     
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