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ハンカチで顔を拭く男に、早瀬が声を掛ける。
「は、はい。」
慌てて立ち去る田所。
「じゃあ、頼んだぞ。」
機捜201の二人と蘭の方に首を回して一言告げると早瀬は通路に消えた。
我孫子悦子は自宅の部屋で水晶を見つめていた。はっとする悦子。
すぐに携帯を手に取ると岡崎テレジアの家に電話を入れた。電話に出たのはマリーだった。
「すぐに逃げて。ヴァンパイアが行くわ。」
マリーは母の元に駆けつけた。テレジアはタロットをテーブルに敷き詰め、どこからか手に入れてきた聖水と十字架をカードの並びの中に埋め込んでいた。
「ママ。悦子さんが逃げろって。」
「逃げてる場合じゃないわ。ここで迎え撃つ準備は整っている。奴を葬らなければ。」
「でも、ママ。」
マリーは狼狽した。あの日喫茶店で対峙したあの男の恐ろしさが蘇る。
「あなたは奥の部屋に隠れていなさい。もしもの時はベランダからお隣さんへ。できるわね。」
「でも、ママ。」
「速く行って。」
マリーは追いやられるように自分の部屋に引き下がった。そしてマリーの感覚にも明かに邪悪な気配が。それはマンション全体を覆い始めていた。
「お願い、助けて。ママが殺される。」
マリーはスマホを握りしめた。
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