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マンションのドアが開く。籠目も悪魔封じも全く効き目がなかったようだ。重い鉄のドアが自分から開いて神島隆一を招き入れた。
「無駄ですよ、こんな子供騙しじゃね。低レベルのヴァンパイアならこの扉は開けることが出来ない。でも私には通用しない。君には分かっているはずだ。」
そう実際に口に出して言っているのかテレパシーで直接頭の中に意思を伝えているのか、別室のマリーにも神島の声ははっきりと聞こえた。
ただ靴音はしない。もし部屋が明るく、マリーが玄関から居間に通じる廊下を見ていたなら、神島が廊下の床から数センチ浮いて、滑るように移動しているところを目撃できただろう。
「来たわね、ヴァンパイア。」
テレジアは座ったまま呪文を唱える。するとカードが端から滑り出して、部屋に入ってきた神島との間に防衛線を築いた。
「無駄だと言ったはずだ。」
神島が片手を上げるとカードが一斉にざわついた。が、空に並んだカードはかろうじて陣形を堅持した。
「やっと見つけたわ。アレクシス。」
今まで聞いたことのない母親の声だった。マリーは隣室で震えを押さえるのに必死だった。
「おやおや、ずいぶんと年を取ってしまったものだ。何年ぶりだ?」
「18年ぶりね。逢いたかったわよ。私が生きているうちに逢えて嬉しいわ。」
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