第1章 吸血鬼(前)

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第1章 吸血鬼(前)

 阿木、生澤の機捜201が通報のあった東光大学西新宿キャンパスに到着したのは午前0時を少し過ぎた頃だった。昼間の倦怠的な暑さは去ったものの、深夜でもコンクリートジャングルが放射する熱が依然地表を覆っている。クルマを降りると二人はまず蒸し暑さに顔をしかめた。 「何なんでしょうね、こんな夜中に大学で殺しって。」  阿木がホルスターの銃を無意識に押さえながら相棒の生澤に問いかける。 「知らんよ。俺は大学行ってないから。」  赤色灯を点けた車を見て警備員が駆け寄ってきた。 「通報した方?」 生澤が声を掛けた。 「警察の方ですか?」  警備員に連れて行かれたのは2号館と呼ばれる高層校舎の地下だった。 「こ、ここです。」  この中には二度と入るものか、そんな決意を目に警備員が指し示した。冷房が切れているらしく館内は熱気にむっとした。もう日付が変わっている。空調が切ってあっても当然と言えば当然だった。  阿木が女子トイレのドアを押す。 「そもそもこのフロアは何があるところなんですか?」 「え?」 質問の意味を理解していないのか、若い警備員は口ごもった。 「いえ、大学の何があるのかと?」 「印刷室です。」 「印刷室?」     
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