第5章 麻布十番の惨劇(前)

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第5章 麻布十番の惨劇(前)

 半年近く進展のなかった東光大学女子大生殺人事件に動きがあったとの急な連絡に機捜201の阿木と生澤は合同捜査本部が置かれている新宿西署に急いでいた。  車の外は凍えるような寒風が吹いていた。事件は夏に起こったのだった。 「被害者木島洋子の交際相手が判明した。梶原桃子35歳、東光大学経済学部講師だ。」 「女?」 「そうだ。かなり注意深く付き合っていたようだし、女と言うことでまあ誰も気がつかなかったんだろう。ようやく証言が取れた。」 早瀬が集めた捜査関係者に解説する。 「そのレズ関係の女が犯人?」 鑑識の権藤が声を上げる。 「LGBT。性的マイノリティと言って欲しい。」 と早瀬が注意をする。 「格好付けないでください。レズはレズでしょうが。」 またしても権藤だ。これを無視して早瀬は解説を続ける。 「そしてこの梶原桃子という女、先頃発足した政治経済研究学生連合という団体の役員で、神島隆一と繋がっている。神島と個人的にも親しいらしい。」 「梶原桃子はバイセクシャル?」 「かも知れない・・・。」 と早瀬管理官。 「政経研学生連合。この前TVのニュースで見ましたよ。最近何かと話題ですよね。」 誰かが発言した。     
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