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近づく 影
お花見しようと草太が言った。
今日会う約束はどこへいった?
明日に延びたの?
それとも来週?
離婚して休日は代わりばんこに幼い息子のめんどうをみる草太にわがままは言えない。
でもね、僕はもう何年も草太の時間を独り占めできる日を待っている。
来るか来ないかわからない日を待っている。
約束なんてしてないのに…
僕のたった一つの大切な言葉は、
【 約束は叶えられる 】
って知ってる?
『 ごめん、雄介が熱を出したから 』
というラインの文字が虚ろな僕の瞳の中で揺れている。
まるで雨にうたれた満開の桜のようにうなだれて。
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