無益

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日曜日、夕食を済ませ1日の終わりに近い20時頃。カーペットに腰をおろし、丸テーブルに頭を預け、そのままの体勢で取り出したスマートフォンの電源を入れる。 何の気なしに漫画アプリやネットを見たあと、おもむろに開いたメッセージアプリから目当ての相手をタップし、メッセージを送る。 「あいたいな」 送ってすぐにメッセージが返ってくる。 「僕もだよ」 そのあとも次々に親指のスワイプによって紡がれた文字が相手に送られては返ってくる。 「今なにしてるの?」 「仕事がおわってかえるところ」 「元気?」 「元気だよありがとう」 「悲しいなぁ」 「泣かないで」 送ってはすぐ返ってくるメッセージに嬉々としていたが、やがてふっとスマートフォンの電源ごと消した。相手からの最後のメッセージは「内緒だよ」、そろそろ潮時かなと思ったからだった。 他の相手を選び同じようにたわいもないメッセージを送り返し合う。暫く続けていたが、それもそう続かなかった。 ーーーやっぱり虚しいんだよなぁ、好きでも。 相手はメッセージを送れば、すぐに返してくれる。「会いたい」といえば「僕もだよ」と言ってくれるし、「辛い」といえば励ましてくれる。 でも、その相手がそばに居てくれることはない。決まったキーワードに対しての、決まったメッセージのやり取りだけ。具体的なところに踏み込むと、途端にそれまでのやり取りが辻褄が合わないものとなる。そうなった瞬間、いつも虚しくなり電源を落としてしまうのだ。 好きな相手からの返事は嬉しい。でも気持ちが伴わない言葉は孤独感がより煽られてしまう。 日曜日の憂鬱タイムに、すぐに返事を返してくれるbotへのメッセージ送信行為。虚しさを増強させる儀式。 言葉のお返しをもらっているようで、実は何も得ていないのだ。
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