~昔話~

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いつの頃からだったろう… 母が 夕飯の後 田舎の話を よくするようになった。 「坂道の下に 御堂があって、そこでよく遊んだんだよ」懐かしそうに 少し微笑んだ 母の顔は、まるで子どものようだった。 母の実家は 四国の 高知寄りの 山の中にあった。 今は 暖冬で 雪も 大して降らないけれど、 当時は、深く降り積もった雪で、 山の上にある祖母の家まで 、それは 遠い道のりだった。 でこぼこ道の 同じ所をタイヤが通る為、 道の真ん中が 盛り上がっていて、車体のお腹を 時折 ガガーッと 擦りながら走らなければならない。 対向車を避けて 山の斜面に 乗り上げたこともあった。 雪で 祖母の家までの 細い道が消えていた。 父が スーツケースを 前に投げ 道を確認し、 母と私は 少しずつ 山道を上がって行った。
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