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「この天幕を出て真っ直ぐ十歩進みなさい。そこで辺りを見渡せば、お友達とはすぐに会えるはずですから」
「ありがとう、占い師のお姉さん! それじゃあ、また!」
「ええ、また。かわいいかわいい『魔王の娘』。あなたの行く先に幸あらんことを」
そして、エリナは入り口の垂れ幕を押し開けて、天幕の外に出た。
エリナの耳にわっと喧騒が蘇り、収穫祭の真っ最中だったことを思い出す。
「えっと、一、二、三、四、五、六、七、八、九……十歩! ここでぐるっと辺りを見渡す――」
「あ、エリナ!」
本当にすぐにその声が聞こえて、エリナは笑顔で振り返った。
「フラン! カナちゃん! よかった~! コルもごめんね、一人ではぐれちゃって。でも、本当にすごいなぁ、さっきの占い師の人。ちゃんと会えたって一言お礼言っておかなくちゃ――あれ?」
もう一度ぐるりと辺りを見渡したが、十歩しか離れていないはずのその天幕を、エリナは見つけることができなかった。
■第一章 収穫祭で一騒動です!
ノクトベルは、ブレナリア王国の王都ブレナリアから南に向かって徒歩で数日ほど離れた丘陵地帯にある小さな街だ。
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