9人が本棚に入れています
本棚に追加
これといった特産品もなく、主要な街道に面していないことから商業での発展も見込みにくいが、西にサビオ連山を臨む風光明媚な土地であり、百年以上前に建てられた大聖堂を中心にゆっくりと発達してきた。
そのノクトベル大聖堂に面する広場は今、収穫祭を祝う人たちでごった返しているところだった。
普段はだだっ広いだけの広場に、所狭しと露天が立ち並んでいて、まったく様相が変わってしまってはいるが、そこはそれ。
広場のどこにいようとも大聖堂だけは必ず目に入るので、街の人間ならば迷子になったりすることはまずない。
「だからホントにあったんだってばぁ」
そんな広場の一角で少女が、必死にそう主張していた。
彼女の名前はエリナ・ランドバルド。
年の頃は十二、身長は百五十サンクトあるかないか。
好奇心の強そうなぱっちりとした蒼い瞳に、腰まである長い金色の髪。そして、白い肌。
腰つきは細目ながら、伸びやかな手足からは良好な栄養状態であることがうかがえた。
「ふふふ、エリナったら、さっきからそればっかり」
そう言ってにこにこと笑っているのはエリナの幼なじみ、フランソワーズ・フラヴィニー。通称フラン。
ウェービーな栗色の髪を左右で縛って下げている。
エリナと同い年で、その背もエリナと同じか、若干フランの方が低いくらい。
ただし、胸の成長の方はエリナに少々先んじていた。
最初のコメントを投稿しよう!