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「私もフランも、べつにエリナが嘘を言ってるだなんて思ってないわよ? これっぽっちもね」
こちらはカナーン・ファレス。エリナとフランからは「カナちゃん」などと呼ばれている。
彼女もまたエリナたちと同い年。
艶やかな黒髪をなびかせ、背中には身の丈のほどの大きな剣を背負っている、この年にして立派な剣士だった。
エリナとフランがカナーンと出会ったのは、つい一ヶ月ほど前のことになるが、まるで元からそうであったかのように、三人はすでに大の仲よしとなっていた。
「ホント!? だったら――」
「エリナが私たちに嘘なんて吐くはずがないじゃない。でも、エリナはおっちょこちょいなところがあるからね」
「じゃあカナちゃんは、わたしの勘違いだって言うのぉ?」
「だってエリナの言うような天幕、どこにも見当たらないんだもの。まあ、その天幕があったとして、エリナはその天幕に入ってどうしたのか、もう一度聞かせてくれる?」
「え、だから……占い師のお姉さんがいて……なんか……なんだっけ? わたしの未来のことを占って……くれたんだったかな……」
エリナは眉根をしかめ、口元に手を当てて考える。
おかしい。
大切なことを聞いたはずなのに、どうしてもその内容が思い出せない。
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