収穫祭で一騒動です!①

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 はっきりと思い出せるのは、自分がはぐれてしまったことを言い当て、天幕から出て十歩進んだ先で辺りを見渡せと言われたこと。  そして、その通りにしたら、即座にフランに声をかけてもらえたことくらいだ。 「なんか記憶が曖昧なんだよね……。さっきまではっきりと覚えてたはずなのに、思い出そうとすればするほど遠ざかっていくみたいな……。あ、夢みたいな感じなんだ! ほら、朝起きたときかにさ、なんかすっごい夢見た!とか思っても、思い出そうとする端から忘れていっちゃうみたいな、ああいうやつ!」  ポンと手を叩いて言うエリナの頭に、鳥がバサッと羽根をはためかせて留まり、キィッと小さく鳴いた。  その鳥は、全体的には白かったが、尾羽の先の方にいくにつれて朱を帯びていた。 「ほら、コルもそれはおかしいって言ってるわよ?」 「言ってないでしょ!? もう、カナちゃん、勝手にコルの言葉を代弁しないでよぉ」  コルと呼ばれたこの鳥は、魔法の授業の時にエリナが召喚した(と思われる)卵から生まれた、もしかしたら鳥ではないかもしれない生き物だ。  もちろんエリナがその飼い主となっており、コルも一番にエリナに懐いてはいるが、卵から孵ったときに一緒にその場にいたからか、フランとカナーンにも非常によく懐いている。     
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