”歩かない”と式の手遅れ 中盤

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スポーツ公園の人口芝生でサッカーの試合をしていた青中サッカー部を見つけました。 横断幕には”神奈川 夏期 県大会”と書かれています。 どっかで聞いた話では、この時期の大会は受験シーズンを迎える三年生にとって、最後の大きな大会なんだそうです。 私はその大会が目に入り、気まぐれで少し見ることにしました。 負ければ三年生は即引退、勝てば次の試合。 その緊張感は相当精神力を削るようで、少しでもチームの誰かがミスをすれば雰囲気(ふんいき)が悪くなり、集中力が低下する。 そしてミスが増える、という悪循環(あくじゅんかん)。 青中の相手校(あいてこう)はまさにその状況だった。 青中が1点入れたのをきっかけに点差はどんどん開き、険悪なムードになっていく。 構わず青中が攻めているときです。 背の大きい三年生達の中に一人だけユニホームのサイズと体が全く釣り合わない生徒を見つけました。 ダボダボな裾をズボンにしまいますが、動きが激しいためまたすぐに出てきてしまう。 彼はどう見ても一年生。 しかし、周りに引けを取らないドリブルとフェイントで、どんどん相手を抜いて行きます。 ペナルティエリアの手前で、ボールを蹴り放ちます。 その体格からではありえないような威力で蹴られたボールは直線を描いてゴールに向かいます。 不意を突いたそのシュートをキーパーがシュートだと認識したころにはもう手遅れだったようで、横切るボールを目と首で追っても、体は棒立ちしてます。 彼の強さは、サッカーをほとんど知らない私にも十分伝わりました。
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