”歩かない”と式の手遅れ 中盤

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この数式をもっと知りたいという欲で埋め尽くされて、紙に書くのを後回しにしてしまったようです。 書(か)いていたのは文字ではなく、冷静さだったんですね。 、、、つまらないダジャレです。 なかったことにしてください。 もう一度数式を考えようとしましたが今の状態じゃ無理があります。 そろそろ立っているのも限界。 、、、ていうか、数式を考えるなんて、そもそも私にできるはずがありません。 あの時の私は何か変だったんです。 トランス状態というのでしょうか? 私だけどいつもの私ではなかったという感じ。 私の父は数学者でした。 なので小さいころから数学に馴染みはありました。 しかし、中学一年生の私に世界を表す数式なんて思い浮かぶはずがないのです。 しかもほとんど暗算で式を変形してました。 今考えてみれば人間の域を超えています。 とりあえず、今は何よりも自分の命です。 早く横にならなくては。 吐き気、めまい、高熱、記憶喪失、発汗、手足のしびれ。 普通に死にえます。 体の重心をベッドのほうへ傾け、そこからは重力に身を任せて、汗も気にせずベッドに飛び込みました。 しばらくして、私の様態に親が気付き。 救急車を呼びました。 ただの熱で救急車なんて大げさだと思いましたが、そんなことを言う声も呼吸もまともにできません。 担架に乗せられたあたりからの記憶はありません。 三日後、何事もなくとまでは言えませんが、事なきを得て目を覚ましました。 クーラーの効いた涼しい病室で。 ベットの周りはカーテンで囲われています。 じっとしていると看護師のおばさんが回ってきて、いろいろと状況を説明してくれました。 一時、45度までに達した高熱で私は意識不明に陥ったそうです。 処置を取ったとたん、熱が下がり、一時間後には通常の体温をとりもどしたんだとか。 てことで、高熱の原因は不明ですが、命に別状はなかったのでとりあえず一件落着です。 残りの問題は、夏休み最終日に徹夜で終えようとしていた宿題がまだ終わっていないのに、新学期が始まってしまったという現実。 あと、重要な数式についてです。 宿題も、数式を思い出すことも共に諦めました。 一から数式を、私なりにもてる知識を絞って考えました。 しかし、中学一年生の知識量から絞りだしても、一週間ほどで底が尽きました。     
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