僕のこころ

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 僕が羽奏の身体から抜けると、わかなはゆっくりと目を覚ました。母親の腕に抱かれ、涙を流しながら。  彼女はそっと母親から離れて立ち上がると、自分の部屋に向かった。ゴミ箱に入ったクマのぬいぐるみをかき集め、ほとんどただの端切れとワタになったそれを、胸にかき抱いた。  僕はもうその中にはいないけれど、初めてのわかなのハグに、心があったかくなる。 「ママ……手伝ってくれる……? この子、縫って直してあげたいの」  戸口に立つ母親は、優しい目で頷いた。  僕はそれを見届けると、そっと窓を抜けて外に出た。  うん、今回は僕、いい仕事したな。  満足感でいっぱいになった僕は、人には見えない光の玉となって、真昼の住宅街を飛び回った。 【了】
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