僕のこころ

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 ローテーブルにカップを二つ置くと、わかなの母親は二人がけのソファに腰を下ろした。人が隣に座った振動が、クッションを通して伝わる。  僕がカップのミルクティーに手を伸ばすと、 「まだ熱いわよ」  と言われた。自分は熱いまますすっているじゃないか、そう思って呟くと、 「20分で会社に戻らないといけないから」  と小さくため息をつく。 「ママのそういうところ、大嫌い」  僕は胸に湧き上がったわかなの気持ちを、そのまま口に出した。母親が不快そうに眉をひそめる。その口が開く前に、僕は続けた。 「ママが大好き」  母親が目を見張った。 「がんばって働いてくれてるの、わかってるよ? だからずぅっと我慢してきた。心配させたくなくて、がっかりされたくなくて、学校でのことも言えなかった。でもホントは、もっとちゃんと、ママに話を聞いてほしいのに……っ!」  話しかけると、いつだって「後にして」と言われる。いつも忙しいかスマホを見ているかで、じゃあいつなら話していいのかが分からない。  ママの新しい恋だって、応援してあげたいけど、自分との時間まで奪われるようで怖かった。  言葉にできずにわだかまっていたわかなの想いが、胸の中に渦を巻く。言い尽くせない気持ちが、涙になって溢れ出た。
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