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僕とわかな
わかなは、高校生の女の子だった。
赤いリボンのセーラー服を着ている。顔にはぽつぽつとニキビがあって、肩の前に垂らした長い黒髪のせいか、ちょっと暗い印象だ。
「はじめまして」
あいさつをしたのに、わかなはじっと僕を見つめるだけで、反応がない。笑顔を見せてくれないし、ハグもしてくれなかった。
目の下には、くまができている。僕を呼ぶくらいだから、よく眠れないのだろう。何か悩みがあるのだろうか。
わかなは僕をベッドに座らせると、自分は勉強机に向かい、黙々と携帯電話を操作した。1時間もそうしていただろうか。僕のことは完全に無視だ。話を聞いてあげることも、僕のお仕事のうちなのに。
気に入られなかったのかな……
心配になって、何か話しかけようかと考えていると、突然わかなが僕の方を振り向いた。
すごく怖い顔をしていた。
怒りと憎しみのこもった、ぞっとするような目をしていた。
わかなは僕に飛びかかるようにして、握った拳で頭を殴った。ベッドに倒れた僕の顔に、体に、拳を次々に振り下ろした。女の子の力とはいえ、殴られたら僕だって痛い。
「やめて! 痛いよ! やめてよぉっ!」
僕は必死で訴えたけど、わかなは僕を殴り続けた。こんなことは初めてで、僕はどうしていいかわからなかった。
その夜、わかなは一応僕を一緒のベッドには寝かせてくれたけど、抱きしめてはくれなかった。そして、僕が隣にいるのに、あまりよく眠れたようには見えなかった。
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