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次の日、学校から帰って来たわかなは、昨日さんざん殴られた僕よりも痛々しい姿になっていた。
顔の左半分に、擦りむいたような傷ができていたのだ。傷は深くはなさそうだけど、範囲が広いし、何よりわかなは女の子だ。こんな風に顔に傷ができて、悲しくないはずがない。絆創膏で隠れる範囲でもなく、まだ生々しい傷が痛そうだった。
転んだのかな。
わかなは部屋着に着替えると、やっぱり僕のことは無視して机に向かった。
宿題をしているみたいだ。少し鉛筆を動かすと、イライラしたように机を蹴ったりため息をついたりしている。勉強は得意ではないらしい。
僕はただ、怯えて座っていた。
昨日みたいに殴られたら堪らない。彼女の機嫌を損ねないように、部屋の隅でおとなしくしているしかなかった。
わかなはどうして僕を呼んだんだろう。ぐっすり眠りたいからじゃないのかな。まさか、殴ってストレスを発散するために? だったらサンドバッグでも買えばいいのに。
やっぱり目鼻がついている方がいいのかな、と、自分の想像にぞっとした。
おとなしく、邪魔にならないようにしていたのに、その夜も僕は、わかなに殴られた。
ひどく痛くて、悲しくて、お店に帰りたくなったけど、仕事中の僕が勝手に逃げ出すことは許されない。
明日の夜を越えれば、帰してもらえる……
そう思って、僕はひたすらに、わかなの暴力に耐えた。
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