僕とわかな

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 落ちた僕の腕を掴んで拾い上げると、わかなは僕を何度も床に叩きつけた。カツ! カツン! と、硬い目鼻がフローリングにぶつかる音が響く。 「物にあたるのはやめなさい!」  息を切らして暴れるわかなを、追ってきた母親が止めた。 「そんなふうにするなら、なんでそんなぬいぐるみ買ってきたのよ!」  母親は、汚いものを見るような目で僕を見た。助けてくれるつもりではないらしい。 「買ったんじゃないし……」  取れかけた腕でぶらりと垂れ下がる僕を見下ろして、わかなが言う。 「拾ったのなら返してきなさい。そんなクマ、ちっちゃい子じゃあるまいし!」 「……ほんとウザい! 出てって! 早く出てってよ!!」  わかなは僕を放り出すと、戸口に立つ母親を押し出して部屋のドアを閉めた。ドアの向こうで、母親が深いため息をついたのが聞こえる。  僕は、冷たい床に寝転がっていた。  しばらくドアを押さえていたわかなは、母親の足音が遠ざかると、まっすぐに僕の方に歩いてきた。沼の底のような、暗い目をしていた。
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