僕とわかな

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 わかなは首を絞めるように、上から体重をかけて僕の首を硬い床に押しつけた。そして、縫い目がほつれた僕の腕を、右手で掴む。  まさか……  そう思った一瞬の(のち)、わかなは右手を斜めに高く引き上げた。その手には、ふわふわした茶色いものが握られている。僕の左腕は、胴体から引きちぎられた。 「こんなクマ……っ!」  そう言ってわかなは、白いわたの詰まった僕の腕を投げ捨てた。 「全然、役に立たないっ! 癒されるとか、落ち着くとか、みんな、嘘ばっか……っ!」  わかなは両方の拳を、交互に僕に叩きつけた。どん、どん、と殴られるたびに、腕のついていた部分から、少しずつわたが漏れる。 「わかな、やめて! やめて!」  僕が叫んでも、わかなには届かない。人間に、僕の声は聞こえない。  腕が取れて、僕の体には痛みの感覚がなくなっていた。こんなのに痛みがあったらつらすぎる。もう、胸だけでも十分すぎるほど痛いんだ。  わかなが僕の残った方の腕を力ずくでひっぱるけど、そっちは簡単には取れなかった。ひっぱられ、捻られるたび、体ではなく僕の心が引きちぎれそうだった。
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