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「ねぇ、私、忙しいんだけど」
私はノートパソコンのディスプレイから目を離さずに言った。
「だから、飯を作りに来たんだろ」と、龍也はジャケットを脱ぎ、シャツの腕をまくる。
「じゃあ、ご飯作ったら帰ってよ」
「うわ、冷てー」
「昨日は合コンだったんでしょ? いい子、いなかったの? 若い子揃いだって張り切ってたじゃない」
冷蔵庫を開ける龍也の背中を見ながら、言った。
「若けりゃいいってもんじゃないな」
「なに、それ」
龍也は自分が買って来た食品を冷蔵庫に入れ、入っていたいくつかの食材を出す。うちの冷蔵庫の中身は、私より彼の方が詳しい。
「なんかさぁ、あのノリに疲れちまって」
「やめてよ、おっさんみたいなこと言うの」
「お前こそどうなんだよ。前の男と別れて結構経つだろ」
トントントン、とリズミカルに包丁がまな板を叩く音がし始めた。
「誰と付き合っても、どうせ別れるんだし……」と、私は小声で言った。
「ん? 何だって?」
「仕事が忙しくて、それどころじゃないだけよ」
私はわざと音を立ててキーボードを叩いた。
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