1.ルール

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 龍也が作ってくれたのは、もやしとネギたっぷりの味噌ラーメン。私一人ならカップラーメンだったろう。 「夜は何、食いたい?」 「昼ご飯食べながら夜ご飯の事なんて、考えられない。――つーか、ラーメン食べたら帰ってよ。本気で忙しいんだから」と言いながら、ズルズルと麺をすする。  寝室の隅に置かれた、龍也のスポーツバッグには、いつも着替えが入っている。泊まるつもりで来たのだろう。いつも、そう。 「わかったよ。今日は一回でやめるから」 「何もわかってない!」 「わかってるよ。忙しいんだろ? ホントは二回のところを一回にしてやるって言ってんだから、いいだろ」と、感謝しろと言わんばかりに頷く。 「欲求不満なら、昨日のうちに若い子捕まえとけばよかったじゃない」 「あのなぁ、俺はそんなにお手軽じゃないんだよ。顔が好みとか、身体がいいとか、若いとか? そんなんだけでヤりたくなるほど欲求不満じゃねーんだよ」と、箸先を私に向ける。 「だったら、ヤらずに帰って」 「晩飯はあっさりがいいよな」  こんな調子で、龍也は毎週末のように私のアパートに泊まっていく。平日も、必ず一日は来る。  龍也に彼女がいない時は。  私に彼氏がいない時は。  二か月前、私が彼氏と付き合いだしてから別れるまでの半年間は、会うどころかメッセージの交換すらしていなかった。  それが、私たちのルール。  どちらかに恋人がいる間は、他人。
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