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龍也が作ってくれたのは、もやしとネギたっぷりの味噌ラーメン。私一人ならカップラーメンだったろう。
「夜は何、食いたい?」
「昼ご飯食べながら夜ご飯の事なんて、考えられない。――つーか、ラーメン食べたら帰ってよ。本気で忙しいんだから」と言いながら、ズルズルと麺をすする。
寝室の隅に置かれた、龍也のスポーツバッグには、いつも着替えが入っている。泊まるつもりで来たのだろう。いつも、そう。
「わかったよ。今日は一回でやめるから」
「何もわかってない!」
「わかってるよ。忙しいんだろ? ホントは二回のところを一回にしてやるって言ってんだから、いいだろ」と、感謝しろと言わんばかりに頷く。
「欲求不満なら、昨日のうちに若い子捕まえとけばよかったじゃない」
「あのなぁ、俺はそんなにお手軽じゃないんだよ。顔が好みとか、身体がいいとか、若いとか? そんなんだけでヤりたくなるほど欲求不満じゃねーんだよ」と、箸先を私に向ける。
「だったら、ヤらずに帰って」
「晩飯はあっさりがいいよな」
こんな調子で、龍也は毎週末のように私のアパートに泊まっていく。平日も、必ず一日は来る。
龍也に彼女がいない時は。
私に彼氏がいない時は。
二か月前、私が彼氏と付き合いだしてから別れるまでの半年間は、会うどころかメッセージの交換すらしていなかった。
それが、私たちのルール。
どちらかに恋人がいる間は、他人。
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