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「麻衣の友達の桑畠あきらです」
「谷龍也です」と、龍也も私に続いて挨拶をした。
道行く人の邪魔にならないよう、どちらからともなく端に寄った。
「二人はどこに行くの?」
麻衣が、鶴本くんより一歩前に出て、聞いた。
「電機屋」と、龍也が答えた。
「え!? 一緒に?」
「ん。目的地が一緒だったから」と、今度は私が答えた。
「あ、そうなんだ」
「ついでに、忘年会の店も決めようかと思って」
龍也に言われて、思い出した。
私と龍也が、忘年会の幹事だ。
「そっか!」
麻衣が、変なテンションで言った。
「じゃ、明日ね」と、私から別れを切り出した。
「明日?」と、龍也が聞いた。
「女子会するの。四人で」
「そうなんだ」
「あ、じゃあ、行こうか」と、麻衣が鶴本くんを見上げて言った。
身長が百五十五センチ程の麻衣は、鶴本くんの肩くらいに頭がある。
私と麻衣は別の方向に歩き出そうとしたが、龍也は違った。
「鶴本くん」
龍也が鶴本くんに一歩近づく。龍也が、ほんの数センチ鶴本くんを見下ろした。
「鶴本くんは巨乳好きなの?」
周囲には聞こえない、けれど私たちには聞こえる声で、言った。
龍也が何を言い出すのかと、私までハラハラする。
「それとも、コスプレ好き?」
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