海士坂 司

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一本はそのままふくらはぎ辺りにくぐらせ、布団ごと締めあげた。 尻の下では、司を振り落とそうと必死にもがいている。 あと少しだ。  残り二本のベルトを留め具部分を使って連結させ、今度は胴の下にくぐらせる。 足と同様に胴を縛ることができた。  ――これでもう大丈夫だ。  そう思った矢先、コトリから力が抜けた。 せわしなく立てていた喚き声も止み、ぐったりと首を垂らす。  ――どうしたんだ?  立ち上がり、距離を取ったまま考える。近づくべきか。 しかし急に襲ってくるかもしれない。 そうなったところでもう危険性はないが。  ――罠か? それとも窒息?  無我夢中でここまでやった。 口に詰めたネクタイが喉を塞いでしまったのだろうか。 コトリの細い喉に空気が通る充分な隙間が開いている保証はない。 ここで彼女まで失うことだけは嫌だった。  ――猿ぐつわだけ外した方が……?  思案している間に、コトリが静かに口を開けた。 ストライプ柄のネクタイがゆっくりと舌で押し出される。 濃いピンクの唇から、透明な糸を引いて零れた。 「……なんで」  力なく(むせ)る。 司は視線を向けたまま、窓枠に置いたスマホを取った。 「なんでこんなことするの?」  ライトの中の彼女は怯えていた。     
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