あなたが眠っているうちに

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それに、明日になれば、林君と会える。一緒の現場で仕事をし、終わったらホテルに直行する。夫には職場が最近忙しくて残業が増えたと言ってある。  いいじゃない。夫だって浮気してるんだからお互い様だ。  翌日。  夫を仕事へ送り出すと、私は入念に化粧をし、パートの現場に向かった。私がパートをしているのは、大型スーパーのレジのコーナーだ。そこでアルバイトとして働いていたのが、まだ若い林君だった。  仕事中、ふいに林君と目が合う。とろけるような視線。ああやっぱり、この恋を始めてよかった。  午後5時。  やっと仕事がおわった。    林君とアイコンタクトをする。これから短いけど夢のような時間が始まる。考えるだけで身体中がとろけていきそうだった。  午後6時半。  私は夢の余韻に浸りながら帰宅した。  当然夫はまだ帰宅していない。私は夢見心地でリビングルームのソファに横たわった。エアコンで部屋の中はちょうどいい具合に暖まっている。気持ちいい・・・。  いつの間にか、私はソファに横たわったまま、眠り込んでしまった。  カチャン。コトン。  キッチンの方から聞こえる謎の音で、私は目を覚ました。時計を見ると、午後7時半を少しまわったところだった。  半分寝ぼけた状態でキッチンに向かう。何だかいい匂いもする。  キッチンを覗き込んで仰天した。夫が料理をしているではないか!夫が振り向く。  「あ、ノリちゃん起きたんだ。今ね、ノリちゃんの好物のビーフシチューつくってるところだよ。」  「あ、ありがとう。」  結婚してから今まで一度も料理をしてこなかった夫が料理をしている!  「いつも家事はノリちゃんに任せきりだったからね、ぼくは。今日の夕飯は僕が作るよ」  「ありがと・・・」  しばらく待って出てきた夕御飯は私の好物ばかりだった。夫が口を開く。 「今日は結婚記念日だからね」  しまった、忘れていた。林君との情事におぼれるあまり。 「ごめんなさい、私すっかり忘れてて・・・」  「いいのいいの。毎日家事全般こなして、パートまでやってるノリちゃんだもん、疲れて忘れるのも無理ないよ」   
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