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「お、お前が悪い。で、で、で、」
成人は興奮すると寄り吃音が強くなり後半は言葉にならなかった。
「電車の中で煙草を吸う奴があるか、そうだな?」
末吉が成人の言葉を待ちきれずに言った。
「はーっ、お笑いだぜ、ホームレスに助けてもらうとはよ。おじさん、もういいから隣の車両に戻って、ありがとうございましたはははっ」
煙草を吸っていた男が大笑いしている。悲鳴を上げた女も男につられて笑い出した。
「おい、恵美、横浜だ降りるぞ、あー面白れえ。おじさんまあ頑張って、でも先にシャワー浴びた方がいいかもよ」
二人は横浜で下車した。末吉と成人はとんだ結末に声も出なかった。
「ま、末ちゃん、そ、そ、そ、そろそろ行こう。パ、パン券もらいに」
「ああ」
「ひ、ひ、ひ東神奈川だ。お、お、俺達も、お、お、お、おおお」
学生の一人が成人の吃音を真似て言った。
「降りようぜ。でいいのか?」
別の学生が成人をフォローする末吉を真似て言った。
「おい、ちょっと待て。お前だ、今のがもしものまねだったら冴えねえなあ。この人に謝れっ、よーっ謝れっ、てめえみてえな反則野郎に野球なんか無理だ、辞めちめえっ、王、長島にに申し訳が立たねえ。」
成人をからかった学生を呼び止めて叱った。ホームで電車を見送った駅員が剣呑な空気を察知して呼子を吹いた。そして近付いてきた。
「どうしたんだね、あなた方はこの学生達に何か用でもあるのか、どうなんです?」
どうみても学生に絡む作業員にしか見えない。
「君たち、この人たちとどういう関係かな?」
駅員の問いに学生たちは黙っていた。それは反省の気持ちを素直に表現出来ずにいたからである。駅員の末吉が学生に因縁を吹きかけているという予想は間違いだがはっきりと詳細を明かすだけの器量がなかった。
「すいませんが乗車券を拝見させてください」
成人が紅潮して末吉を凝視している。駅員は切符を出さない二人を交互に見やった。
「持っていないんですね? こっちへ来て」
「な、な、な、な、なにも」
「いーからこっちへ来なさい」
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