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結局、千尋とは話せないまま、俺は自分のアパートに帰った。
今、千尋の家に押しかけたら、きっと歯止めが利かなくなる。
無理やり押し倒して、長谷部課長も届かなかった千尋の奥の奥に押し入って、俺を刻みたかった。
そんな妄想を抱きながら、彼女に会うわけにはいかなかった。
千尋は美幸のことを気にしてくれているだろうか……?
千尋から連絡があるのではと淡い期待を持ってスマホを眺めていたが、虚しさが募るだけだった。
その週の五日間。
昼少し前に、美幸は来た。
何度言っても、俺の携帯は鳴らさずに、会社の受付を通して俺を呼び出した。
ただ、向かい合って、黙って飯を食うだけ。
味気ないのを通り越して、吐き気がした。
他の男への復讐の道具にされるのは、気に入らない。本当に、気に入らない。
でも、それ以上に、千尋が何の反応も示さないことが、更に気に入らなかった。
駆け引きのつもりだった。
千尋と付き合い始めてから、五日間続けて彼女の家に行かなかったのは、初めてだった。
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