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「あきらとそういう関係になってから、龍也が誰と付き合っても長続きしないの、気づいてないわけじゃないでしょ」
「私のせいじゃないわよ」
「そう? あきらがフリーの時、龍也に彼女がいること、あったっけ?」
あきらが言葉に詰まった時、店員が料理を運んできた。私の前にシーフードグラタンとパン、あきらの前にビーフシチューとパンを置く。
ごゆっくりお召し上がりください、と一礼して、会計伝票をテーブルに置くと、店員は足早に去って行った。
十二時を過ぎて、店内が混みあって来たのだ。
私はシーフードグラタンをスプーンですくい、息を吹きかけた。
「龍也が彼女と長続きしないの、私のせいかな」と、あきらが呟いた。
「龍也自身が自覚してるかは、わからないけどね」
「私ももう……潮時かな」と、あきらは無理が見え見えの笑顔で言った。
あきらもまた、龍也が好きなのに、決して認めようとはしない。
理由は、わかっている。
わかっているから、ツラい。
二人は大切な仲間だから幸せになってもらいたい。
けれど、あきらの心の痛みもわかるから、無責任なことは言えない。
「龍也が納得する?」
「納得も何も……」
「龍也、泣かさないでよね」と、私は龍也の姉か何かになった口ぶりで言った。
「どうして龍也が泣くの!?」
「じゃあ、あきらが泣くの?」
あきらは泣いたりしない。
きっと、どんなに泣きたくても、あきら自身がそれを許さないだろう。
気持ちは、わかる。
「仕事、頑張ろ」と、私は呟いた。
「うん」
あきらが、笑って頷いた。
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