2.OLC

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「あれ? まだ二人だけか?」  大和が言った。隣には、さなえ。 「全員来るんだろ?」 「うん」  私はさなえから二人分の会費、二万円を受け取り、封筒に入れた。 「忘年会は会費なしでできそうか?」 「よっぽど高い店にしなきゃ、大丈夫だろ」と、陸が言った。 「次はあきらか?」 「そ」 「じゃ、龍也だな」 「だね」  あきらと龍也の関係は誰も知らないけれど、龍也があきらを好きだったことはみんな知っていて、知らないのはあきら本人だけ。  今の龍也の気持ちはどうであれ、あきらが幹事の時は龍也をペアにする。  あきらはどうしていつも龍也とセットなのかと文句を言うけれど、たまにしか来ないあきらに拒否権はない。 「大斗(だいと)くんは元気?」  私は隣に座ったさなえに聞いた。 「うん。今ちょっと風邪気味だから、寝るときぐずるようなら早めに帰るかも」 「最近、寒いもんね」  大斗くんは大和とさなえの息子で、二歳。  半年くらい前に会った時は、人見知り全開で大泣きされてしまった。  大学時代のさなえは、一歳年下とは思えないほど幼くて、天然で、その危なっかしさからサークル内ではお嬢様のような存在だった。  見た目も、腰まである栗色の髪に、白やピンクの服を着て、そこにいるだけで癒された。同年代の同性からは『ブッてる』とか『男受けを狙ってる』とか言われてツラい時期もあったようだけれど、少なくとも私と麻衣とあきらは、さなえが可愛くて堪らなかった。  だから、さなえが大和を好きだと知って応援したし、二人が付き合いだした時は嬉しかった。  そのさなえも現在(いま)は一児の母で、大和の実家の設計事務所の手伝いもしている。  ネイルと靴が好きで、さなえのアパートの一室は全て服と靴で埋まっていた。  だから、ネイルどころか短い爪に、Tシャツとジーンズ、スニーカーで自転車に乗っている姿を見た時には、本当に驚いた。  さなえがここまで変わるとは。 「あ! 麻衣ちゃん」  相変わらず高くて甘いさなえの声に顔を上げると、麻衣が入ってきたところだった。さなえの声に気が付いて、店員の案内を断った。 「龍也とあきらはまだ?」 「ああ」と、陸が答える。 「今日、寒いね」  麻衣はジャケットをハンガーに掛け、壁のフックに引っ掛けた。 「麻衣ちゃん、先週は大斗がごめんね」と、さなえが言った。 「ううん、大丈夫だよ」と言いながら、麻衣が会費を私に差し出した。 「ん? 大斗?」と、大和。 「ほら! 勝手に私のスマホ弄って、麻衣ちゃんに電話しちゃったって言ったじゃない」 「ああ、言ってたな」 「大斗くんがスマホ弄るの?」と、私は麻衣の会費を封筒に入れながら、聞いた。 「そうなんだよ。動画見たくて」 「今時の二歳児って、みんなそうなの?」と聞きながら、麻衣がさなえの隣に座った。 「うちはあんまり見せないようにしてたんだけどさ」と、大和がため息交じりに言った。 「あ、また私のせいにしようとしてる」と、さなえが少しムッとして言った。 「大和だって――」
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