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「なんで……私には変な男ばっか……」と、麻衣が呟く。
全員、身構えた。
始まるぞ……。
「整形する! 顔を変えて、胸を小さくする!」
ほら、きた。
毎回のように、麻衣は言う。
豪快にビールを飲み干す。
タイミングよく店員が追加のビールを運んできた。
「変態じゃない男に好かれたい……」
麻衣の願いは切実だ。
就職も、何社か手応えのある大手事務所があったのに、一番社員の年齢層が高く、男性社員の人数と女性社員の人数が同じくらいの事務所を選んだと聞いた。
収入面で言えば勿体ないことだが、伸び伸びと働けている様子で、結果オーライ。
「結婚相談所……でも登録しようかな」
「結婚したいの?」
「したい。結婚して子供を産めば、変態も寄って来ないでしょ」
「まぁ……、確かに?」
「けど、変態じゃない恋人より、変態じゃない結婚相手の方が、ハードル高くない?」と、あきらがズバリ、言った。
「だから! そこはプロにお任せするの」
「相談所に提出するプロフィールに、性癖まで書く奴はいないだろ」と、大和がエイヒレを銜えて言った。
「それに、変態じゃなきゃ誰でもいいわけでもないだろ」
「麻衣さんの後輩は?」
黙って聞いていた龍也が言った。
「若くて、何年も一緒に働いてるけど、変態じゃないんでしょ?」
「やめてよ! 七歳も年下だよ? 軽いし!」
麻衣がムキになって言った。それを誤魔化すように、ビールを飲む。
「その子に挑発されたって、具体的に何を言われたの?」
つくねを取ろうとしたけれど、先に陸に取られてしまって、鶏串を取った。
「……私なんか、モテる高井さんが本気で相手するはずない……って」
「随分失礼な後輩ね」と、あきらがチーズを摘まんで言った。
「でしょ!? いつも『可愛い』とか『エロい』とかスケベっぽいことばっかり言ってるのに、高井さんに誘われた途端に『身持ち堅そうなのに、実は遊び慣れてるのか』とか言うし!」と、麻衣はまたムキになってジョッキを傾けた。見る見る間にビールが減っていく。
それって……。
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