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この場の誰もが同じことを考えていると思う。気づいていないのは、麻衣だけ。
「麻衣。その後輩は麻衣のこといやらしい目で見るのか?」と、大和が聞いた。
「ううん?」
「彼女はいる?」と、さなえが聞く。
「どうだろ」
「高井って奴と食事に行くって聞いて、なんて言った?」と、陸。
「ホテルなんて行くな、って」
「その子、ちゃんと麻衣の目を見て話す?」と、あきら。
「うん」
「仕事振りは?」と私が聞く。
「真面目だよ? ふざけたことを言っていても、仕事に関しては私の言葉をちゃんと聞くし、覚えも早いし、ミスも素直に反省するし」
「カッコいいですか?」と、龍也。
「一般的にモテるタイプだと思うよ? 背が高くて顔小さくて、よく笑うし、話しやすいし、よく周りを見て気が利くし」
「髪、ちょっとくせっ毛で、黒にグレーのラインが入ったバッグ持ってます?」
ん? と思った。みんなが龍也を見る。
「なんで知ってるの?」
さすがに麻衣も気が付いて、聞いた。
「ホテルで麻衣さんを待ってる時、見たんですよね」
「え?」
「俺、麻衣さんが食事に行った時にホテルに迎えに行ったんですけど――」
「麻衣を送ってくれって、俺が頼んだんだよ」と、陸が補足説明する。
「麻衣さんが出てくる直前にその男が出て来たんだよ。やたら慌ててたから、憶えててさ。麻衣さんが俺の車に乗るところも見てた気がするんだよな」
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