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「まっさかー」と、麻衣が笑う。
既に酔いが回ってきているのか、顔が赤い。
麻衣はお酒が好きだけれど、弱い。
基本的には、私たちと一緒の時しか、飲まない。
「食事の後、後輩に何か言われた?」
「何も?」
「ふぅん……」
その後輩、麻衣に惚れてるな……。
麻衣以外の全員がそう思ったはずだが、あえて何も言わなかった。
麻衣は強情なところがある。
後輩を意識させるようなことを言えば、ムキになって後輩と距離を置くかもしれない。
「彼女に逃げられた男だったのかな」と、龍也が言った。
「麻衣は追いかけられなくて良かったねぇ」
私は棒読みっぽく、言った。
「ま、何にしても、あの男とはもう会うなよ」
陸の言葉に、麻衣が頷いた。
「婚活も悪いとは言わないけど、焦らない方がいいよ?」
私の言葉に、麻衣が頷く。
「そうだよ! 結婚する前に、思いっきり仕事して遊んだ方がいいよ。結婚して子供が出来たら、簡単には別れられないし、失敗したと思っても遅いんだから」
さなえの言葉に、その場の空気が冷えた。
さなえは平然と唐揚げを頬張る。
チラリと見ると、大和が気まずそうにビールを飲んでいた。
夫婦喧嘩か……?
大和が黙っているということは、やらかしたのは大和の方だろう。
夫婦なんだから喧嘩もするだろうけれど、大和にベタ惚れで結婚したさなえが愚痴を言うのも聞いたことがなかったから、驚いた。
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