2.OLC

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「さなえ、チゲ雑炊シェアしない?」と、麻衣が言った。 「うん。食べたい」  麻衣がボタンを押して店員を呼ぶ。 「焼き鳥も頼んで。俺、食ってない」 「私、梅酒」 「ライムサワー」 「イカの一夜干し」 「みんな、自分で言って」 「大和、ご飯ものも食べなきゃ悪酔いするよ? ピザでいい?」  さなえが言った。 「ああ」と、大和が呟いた。  なにがあったんだか……。  付き合いが長いとはいえ、それぞれに抱えているもの全てを知っているわけではない。  偶然にも私はあきらの秘密を知り、あきらにも私の秘密を知られてしまったけれど、自分から言うつもりなんてなかった。  軽蔑されたくない――。  唯一、私が安らげるOLC(この場所)を失いたくない。  集まって一時間半が過ぎた頃、さなえのスマホが鳴った。 「もしもし。……いいえ。…………わかりました。すぐに迎えに行きます。……はい。すみません。……はい。お願いします」 「母さん?」  電話を終えたさなえに、大和が聞いた。 「うん。大斗がぐずってるって。先に帰るね」 「俺も――」 「いいよ、大丈夫。お義母さんが家まで送ってくれるって」  さなえはバッグとジャケットを抱えて、立ち上がった。 「ごめんね、みんな。また、ね」 「気を付けてね」 「さなえ――」  見送ろうとして立ち上がろうとする大和の肩に手を置いて、さなえは阻止した。 「大和、飲み過ぎないでね」 「ああ」 「大斗くん、お大事にね」 「ありがとう」  さなえが後ろ手にキチッと襖を締めた。だから、みんな見送りに出るタイミングを逃してしまった。
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