3933人が本棚に入れています
本棚に追加
/346ページ
「悪いな、バタバタで」と、大和が言った。
「何言ってんの」と、私は言った。
「チゲ雑炊は食べられたから、良かった」と、麻衣が言った。
「珍しいね、夫婦喧嘩なんて」と、あきらが言った。
「あれって、やっぱそうなの!?」と、龍也。
「さなえがあんなこと言うの、初めて聞いたな」と、陸。
「ま、色々あるわよね。言いたくなきゃいいけど?」
はぁ……、と大和が深いため息をついた。グイッとビールを煽る。
「さっきさなえが言ったこと、俺が言っちまったことなんだよ」
「え? 結婚前に遊んだ方がいい、って?」
「そ。この前、地元の友達と飲んだ時にポロッと言っちまってさ。そいつは結婚もまだで、彼女もいないって愚痴ってたから、励ますつもりもあって言ったんだよ。結婚が全てじゃない、みたいな? それを、タイミング悪く、迎えに来たさなえに聞かれたんだよ」
「あーーー……。うん。マズいね」と、あきらが言った。
「別に、俺は結婚を早まったつもりはないし、失敗したとも思ってねーよ? 一般論として、焦んなって言いたかっただけでさ」
「それをさなえには言ったの?」
「言ったよ」
「許してもらえなかった?」
「……泣かれた。しかも、俺に隠れて」
「ショックだったんだねぇ」と、麻衣。
「けど、さなえなら大和の言葉が本心じゃないってわかってくれるでしょ?」と、あきら。
「どうだろな。気にしてないって言ってたのに泣いてたし、さっきみたいに言うってことは、やっぱ怒ってんだよな」
大和が弱気になるなんて、珍しい。
基本的に楽観主義だし、『なんとかなる』が口癖。いつも笑ってるイメージ。
「麻衣たちさ、たまにでいいからさなえを連れ出してやってくんないか?」
「え?」
「あいつ、大斗が生まれてから、全然遊びに出てなくてさ。このメンバーで集まる以外、家事してるか、仕事手伝ってるかでさ。買い物も近くのスーパーに行くくらいだし」
「子供がいたら、そういうものでしょう?」と、私は残っていたポテトを口に入れて、空いた皿を重ねた。
最初のコメントを投稿しよう!