2.OLC

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「最近のママさんたちはそうでもないらしいんだよ。保育園や旦那に子供を預けてランチとか飲みに行ったりもするし、割と自分の服や化粧品にも金をかけたり? ま、金に余裕があるからなんだろうけど。けど、さなえはそういうの全然ないんだよ。家事も手を抜かないし、仕事も手伝ってくれて助かるけど、なんつーか……隙がないっつーか……」 「ちょっと意外だな」と、陸が言った。 「大学の頃のさなえって、なんか危なっかしかっただろ。大和じゃなくても、保護欲を掻き立てられるっているか、目が離せなかったんだけどな」 「うん。わかる。同い年だけど、妹がいたらこんな感じかと思うくらい、放っておけなかった」と、龍也。 「男ってバカだね」と、麻衣が低い声で言った。 「こんだけ長い付き合いなのに、全然わかってないんだから」  うんうん、と私とあきらが頷く。 「さなえ、結構しっかり者だよ? 普段はおっとりして危なっかしいけど、人を良く見てるし、家事とか仕事とかはかなり要領よく出来るし。料理させたら、この中で一番手際いいと思うよ」  そうなのだ。  体調が悪いとか、悩みがあるとか、さなえには隠せない。しかも、それをズバリ指摘するんじゃなくて、さり気なく労わって、話を聞いてくれる。人一倍世話焼きで、優しい。 「けど、出しゃばるようなこともしないでしょ。内助の功、なんてさなえのためにある言葉みたいなもんだよ」 「けどさ、それって男にしたらプレッシャーじゃね?」と、陸が言った。 「人それぞれだろうけど、あんまり完璧すぎても落ち着かないっていうか――」 「無理させてるんじゃないかって、思うんだよ」と、大和が言った。 「あいつ、自分のことは何でも後回しでさ。毎日、俺や大斗の世話ばっかで、そのうち嫌になるんじゃないか……とかさ……」 「そういう性分てだけじゃなくて?」と、龍也が言った。 「さなえって、おっとりしてるけど嫌なことはハッキリ言えて、流されるタイプじゃなかったでしょ。不満があったら言うと思うけど」 「確かにね」 「どうかな。大斗が生まれてから二人で話す時間もないし」 「そうなの!?」 「そ。だからさ、たまに女同士でストレス発散させてやってくれよ」  大和が、力なさげに笑った。
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