2.OLC

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「さなえ、大丈夫かな」  麻衣がスクリュードライバーを飲みながら言った。  酒が弱い麻衣が、乾杯のビールから四杯も飲んで起きているのは、珍しい。 「大丈夫でしょ」と、あきらが言った。  あきらはペースを落とすことなく飲み続け、二軒目(ここ)に来ても梅酒を注文した。 「色々あるでしょ、いくら仲が良くたって」  私は小休憩に、コーラを飲んでいた。 「ねぇ、麻衣」 「ん?」 「後輩……、鶴……田? 鶴木? だっけ?」  麻衣とセットで『鶴亀コンビ』としか覚えていなかった。  あきらがクスクス笑っている。私も酔っていると思ってるのだろう。 「鶴本」 「そう! その、鶴本くんてどんな子?」 「さっき、言ったじゃない」 「一般論はね。そうじゃなくて、麻衣にとってどんな存在か」  あきらが、横目で私を見ている。『それ、聞いちゃうんだ』と言わんばかり。  ほろ酔いだし、大丈夫でしょ。 「ホテルまで来てくれていたのが本当に鶴本くんだったとして、麻衣はどう思う?」 「どう……って……」  以前から話を聞いていて、麻衣にとって鶴本くんが特別な存在になりつつあると感じていた。  それは、同僚としての親しみかもしれないし、年上だからという責任からかもしれないし、異性としてかもしれない。  麻衣自身が気づいているようではなかったから、これまではあえてその話題に触れてこなかった。  けれど、龍也が見た挙動不審な男が鶴本くんだとしたら、彼は麻衣を同僚とか先輩として見てはいないはず。 「正直に言ってごらん?」 「……わかんない……」 「何が?」 「調子のいいことばっか……言うから……」  麻衣がゆっくりと舟を漕ぎだす。 「例えば?」 「可愛いとか……エロいとか……言うし……、遊び慣れてる……とか……言うし……」 「うん」 「なのに、高井さんと食事に行くって言ったら……泣きそうな顔……して……」  私とあきらは顔を見合わせた。  きっと、同じことを思っている。 「七歳も……年下のクセに……」 「生意気な子だね」と、あきらが言った。 「ホント、最近の若い子はチャラすぎ」  麻衣を挑発しようとしているのが、見え見え。そして、酔った麻衣は、簡単にその挑発に乗った。  閉じかけていた目を開き、スクリュードライバーを飲み干す。 「けど! いい子だよ!? 私が見られてたら、庇ってくれるし。エロいとか言うけど、胸ばっか見てたりしないし!」  いい子、ねぇ……。
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