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「麻衣のお気に入りなんだ」
「そんなんじゃ……ないも……」
「七歳年下じゃ、婚活の相手にはならない?」
私の問いに、麻衣がふふふっ、と笑った。
「私は結婚なんてしないよぉ……」
「結婚相談所に登録するんじゃないの?」
「んーーー……」
とうとう、麻衣はテーブルに顔を伏せてしまった。
「麻衣?」
「私の身体……ダメダメ……だから……」
「ダメダメって――」
覗き込むと、麻衣の目は完全に閉じていて、気持ち良さそうな寝息まで聞こえてきた。
「オチたか」
あきらが麻衣のジャケットを、麻衣の背中に掛ける。
「麻衣にしては飲んでたもんね」
「結婚相談所……って、本気だと思う?」
私はバーテンダーにジントニックを注文した。あきらは梅酒のお代わりを。
「まさか」
「だよねぇ」
「麻衣はさ、見た目は女女してるのに、性格は男前のところがあるじゃない。そういうのをわかってくれる男性が合ってると思うんだけど、基本的に男を寄せ付けないんだから、選択肢はほぼゼロよね」
「貴重な選択肢が、七歳年下かぁ」
私が知る限り、麻衣は年下と付き合ったことがない。意図的に避けているのかはわからないけれど。
三十歳も超えれば、一歳や二歳の年の差なんてあってないようなものだろうが、七歳となると私でも敬遠する。
「そういえば、麻衣っていつから彼氏なし?」
あきらに聞かれて、考えた。
「一年……は確かだよね」
「陸が結婚した時はいたよね?」
「そうだ、いたいた! 三十路にメイド服は痛すぎるって愚痴ってたの、その頃だよね」
二年前。麻衣の誕生日少し前にOLCで集まった。陸の奥さんも一緒に。
あの時の麻衣はメイド好きの何歳か年上の男と付き合っていて、ご主人様とメイドごっこをさせられなければ、文句ないのにと愚痴っていた。
確か、あの後すぐに別れたはず。
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