3.仮面夫婦

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「あなたたちは、まだ子供は作らないの?」  挙式と披露宴の合間に、お義母さんが聞いた。俺の両親もいる場で。  美幸の妹は、いわゆるデキ婚。  俺の母親から結婚式のことで電話があった時、同じように子供はまだかと聞かれた。妹が先に母親になることが、美幸の両親は少し心配らしい。 「子供は考えていません」  俺は、言った。  美幸が適当なことを言う前に。 「そうなの?」  その場の誰もが、驚いたようだ。  美幸だけが、ジロリと俺を睨みつけている。  化けの皮が剥がれかかってるぞ。  俺は心の中で、フッと笑った。 「今は、ってことでしょう?」と、俺の母親がフォローする。  そうなると、俺はそれ以上言えない。  何も知らない両親を悲しませたくはない。 「お互いに仕事が楽しいので」と、美幸が便乗した。 「そうなの。でも、仕事は子育ての後でも出来るんだし、出来るだけ若いうちに産んだ方がいいわよ」  美幸は三十四歳。  子供を産む年齢としては、もう若いとは言えない。 「わかってる。ちゃんと比呂と考えてるから」  美幸の面の皮の厚さには、吐き気がする。  結婚した時から、折に触れて子供のことは言われていたが、二年前までは本当に、流れに任せて出来たらいいと思っていた。  だから、嬉しかった。  本当に、嬉しかったんだ。  美幸が妊娠したと聞いた時は――。
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