3.仮面夫婦

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 翌日、俺は美幸に記入済みの離婚届を渡した。が、美幸は俺の目の前で破り捨てた。 『両親を悲しませる必要はないわ。あなたはあなたで自由に遊んでいいのよ』と言って。  一時間後。  俺は家を出た。 「いい加減、俺を解放してくれ」  結婚式の後、部屋に戻った俺は言った。美幸はバスローブ姿でスマホを弄っていた。 「こんな茶番に付き合わされるのは、うんざりだ」 「どんな女性(ひと)?」 「は?」 「付き合ってる女性(ひと)がいるんでしょ?」と、美幸はスマホから目を離すこともなく、聞く。 「お前には――」 「適当に遊んでるだけ? あなた、モテるものね」 「ふざけるな!」  仮にも一度は愛して結婚した女が、スマホを弄りながら愛人について聞いてくるなんて、異様だ。『ランチは何を食べたの?』とでも聞いているよう。 「不倫相手と別れる気はない。だが、離婚もしない。そんな身勝手が許されると思っているのか!」  流産したのが俺の子供じゃないと分かった時、泣いて謝りでもされたらここまでこじれなかったろう。結果的にはやはり離婚だろうが。  だが、美幸は悪びれもせず、不倫相手とは絶対に別れないと言った。  それどころか、相手の男を『浮気相手』と言った俺に、『浮気相手はあなたよ。彼をそんな安っぽい呼び方しないで』とまで言った。  美幸が男なら、間違いなく殴っていた。 「大体、このままダブル不倫なんて続けて、お前と相手の男に未来なんてないだろ」と、俺は前髪を掻き上げた。 「……そうね」 「わかってるなら――」 「私たち、身体の相性は良かったわよね」
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