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涙が、滲んだ。
けれど、すぐに引っ込んだ。
『やべ、勃った』
「はぁ?」
『テレホンセックスってしたことある? テレビ電話にしたら――』
私は一方的に電話を切った。
私のセンチメンタルな一瞬を返せ!
心配して、損した!!
私は比呂にメッセージを送った。
『ぴょん〇ょん亭の冷麺買って来て』
すぐに、ウサギが投げキッスをしているスタンプが届いた。
私からは、無表情のくまのスタンプ。それから、布団に入って眠るくまのスタンプ。
比呂からウサギが『おやすみ』と手を振っているスタンプが送られてきて、私はスマホをベッド横のローチェストに伸びている充電器に差した。
「好きよ、比呂」
枕に顔を埋めて、呟く。
「早く帰って来て」
決して届くことのない、言葉。
決して届いてはいけない、想い。
私は、比呂が置いて行ったパーカーを着て、目を閉じた。
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