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「あくまで統計上だけど、レス夫婦自体、どちらかか両方がその現状に不満を持っている場合がほとんどらしいの。つまり、円満な家庭じゃないってことね。それは、子供にかなりストレスを与えるらしくて」
あきらも、さなえを脅かそうと言ったわけではないだろうけれど、さなえの不安を思うと、ちょっと言い過ぎじゃないかと感じた。
「けど、さなえと大和の場合は、きっかけが掴めないだけでしょう? 気持ちが冷めたわけじゃないんだから」
「そうだよ! さなえが家事と育児と仕事の手伝いに追われて遊ぶ暇もないって心配してるくらいなんだから、大和はさなえを大事に想ってるよ」と、麻衣も私の援護をする。
「……どうかな」と、さなえが不安そうに呟いた。
「お洒落どころか化粧もろくにしない私には、そんな気になれないのかもしれない……」
お洒落か……。
いつも身ぎれいにはしているけれど、さなえが自分磨きにお金をかけている様子はない。
今更だけれど、独身でお金の自由がきく私たちを、さなえはどう思っているのだろう。
「じゃあ、その気にさせたらいいじゃない」
「どうやって?」
「たとえば――」
私はスマホを取り出し、手早く検索した。
「あった! んーっと、今からなら——」
時間を確認する。
デザートはしっかり食べたいから――。
「一時間後でいいかな」
「何が?」と、麻衣。
「美容室。カットとトリートメントを予約したから、早く食べちゃお」
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