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「キムチ、あったっけ……」
「一緒に入ってる」
袋を受け取って中を見ると、箱に入った冷麺の他に、小さな保冷バッグも入っていた。中にはキムチときゅうり。
「この鍋でいいか?」
比呂がシンク下の引き出しを開け、両手鍋を取り出す。
「比呂?」
「俺だって、麺を茹でるくらいできる」
私の部屋に来るようになって、比呂がキッチンに立つのは初めて。私が立ち入らせないようにしていたせいもあるけれど。
昨夜の電話といい、久し振りに会った奥さんと何かあったのかもしれない。
だとしても、私からそれを聞くつもりはない。
私は食器棚からラーメン丼を二つ、カウンターの上に置いた。それから、きゅうりを切る。
比呂は箱から麺やタレを出している。
こんなの、なんだか――。
「夫婦みたい、だな?」
私が思うより先に、比呂が言葉にした。
同じことを考えたことが、無性に恥ずかしい。
「そ? 夫婦がどんなものか知らないから、わからない」
私は目も合わせず、切ったきゅうりを皿にのせた。
「お前の両親は?」
「さあ?」
「は?」
「ほら! お湯、噴いてる」
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