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「ご飯、何?」
「ああ。俺ん家の近くのおむすび屋の弁当」
千尋の最寄り駅の前には手作り弁当の店とパン屋、コンビニが並んでいて、スーパーは駅の反対側にある。
俺が千尋を訪ねる時、決まって弁当かパンを買っていた。けれど、食べ慣れている千尋はそれを嫌がり、俺は自分の最寄り駅の近くにある弁当屋で買うようになった。
『おむすび屋』という名前の通り、十何種類の手作りおむすびの店で、総菜も売っている。千尋はそこの、ハラスのおむすびが好きだ。
千尋は俺の手から袋を受け取ると、中を覗き込んだ。目当ての包みを取り出す。
散らかったテーブルを片付けることはせずに、俺たちは床に座って、おむすびを食べた。なぜか、背中合わせだった。
「うまいか?」
「うん」
ソファの上に広げられている図面に目を向けた。それから、床のカタログ。照明やカーテン、建具、壁紙。
「これ、北嶋邸の内装案か?」
「うん」
北嶋邸は二世帯住宅。
一階に夫の両親、二階に新婚夫婦が暮らす。
一階は夫婦の寝室と、だだっ広いリビングダイニングだけで、かなりシンプル。ご夫婦は仲が良く、起きている時は同じ空間で過ごすから、本棚やご主人の机もリビングに置くのだという。
ところが、二階の新婚夫婦は、ログハウスのような家にしたいと言う。リビングとダイニングの間に木の丸い柱が欲しいとか、バーベキューが出来るテラスが欲しいとか。
一先ず、要望を聞いて、俺が設計した。最初は金城を担当にしたのだが、泣きつかれた。
その設計書を千尋に渡したのが一昨日の事。
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